医療法人平治会 ASKAレディースクリニック

胚盤胞移植
受精卵は、2分割→4分割→8分割と分裂を続け、およそ5日目には「胚盤胞」と呼ばれる着床前の状態に至ります。従来は受精後2〜3日目の初期胚までが技術的限界でしたが近年、培養液の開発により胚盤胞までの培養が可能となりました。
胚盤胞まで発育した良好胚を移植できるため、着床率が高いのが特徴です。移植数を少なく抑えることができるため、多胎妊娠の防止にもつながります。また初期胚移植と組み合わせた「二段階胚移植法」は、反復不成功例にとっても有用とされます。

胚盤胞のグレード分類(ガードナー分類)
胚盤胞は、受精後2〜3日目の分割卵とは違い胞胚と呼ばれる構造となります。
喩えるならスイカの中身をくり抜いて中にリンゴを一つ入れた様な構造です。
スイカの外皮の部分が透明帯、残った身の部分が外細胞塊、リンゴの部分が内細胞塊と呼ばれ、これが胎児になる部分です。これらの状態をA〜Cの3段階に分類してグレードを決めます。グレードの良いものほど妊娠率は高くなります。
グレード
AA AB AC
グレード
BA BB BC
グレード
CA CB CC
高い   ←   妊娠率   →   低い

胚盤胞移植の特徴
長所
 1.初期胚移植より高い妊娠率
(理由1)自然に近い移植
受精卵は、細胞分裂を繰り返しながら卵管から子宮へと移動し、子宮内で胚盤胞に到達した後、透明帯を破って孵化して子宮内膜に着床します。
本来はまだ卵管内にいるはずの初期胚を、子宮内に移植する初期胚移植は、生理的とは言えません。受精卵は、非生理的な環境で着床までの数日間を過ごさねばならず、順応できなければ途中で発育が停止してしまいます。このことは初期胚移植が不成功となる一因とされます。初期胚を胚盤胞へ育てあげてから着床の準備のできた子宮に移植することで、より高い妊娠率が得られると考えられます。

(理由2)受精卵の選別
受精卵は、その40%に染色体異常があるとも言われ、全てが着床することはまずありません。こうした問題のある受精卵は、分割〜着床の段階である程度の淘汰を受けるからです。初期胚は、グレードが良いほど妊娠率が高くなりますが、そうした受精卵でも培養を続けると、発育が途中で停止してしまうことがあるのはこうした理由によるものです。初期胚移植を行っても妊娠しない場合には、子宮内で同様な事が起こっていると考えられます。初期胚が胚盤胞に到達する過程において受精卵がある程度の選別を受けることが、胚盤胞移植が高い妊娠率につながるもう一つの理由です。

 2.多胎妊娠の防止
受精卵の移植数を増やせば妊娠率は上昇しますが、同時に多胎妊娠も増加します。着床率の高い胚盤胞移植では、移植数を1個に制限しても高い妊娠率が得られます。つまり胚盤胞移植では、高い妊娠率を維持しながら、多胎妊娠を防ぐことができるのです。

 3.子宮外妊娠の防止
受精卵を子宮内に移植しても、意外にも子宮外妊娠は起こります。着床するまでの間に受精卵が卵管に逆行し、そこに着床してしまうことがあるからです。初期胚は、一旦卵管に向かった後に子宮に戻ってくる(受精卵回帰)という仮説もあります。胚盤胞も卵管に移動することはありますが、移植から着床までの時間が短かく、早い段階で子宮内膜に着床するため、子宮外妊娠の発生が抑えられるのではないかと考えられています。
しかしながら実際には、子宮外妊娠を100%防ぐことはできておりません。

短所
 1.胚移植キャンセル
受精卵のうち良好な胚盤胞に到達できる割合は、20〜30%にとどまるため、受精卵が少ない場合には、胚盤胞が一つもできずに、予定された移植がキャンセルになることがあります。

 2.未完成な培養技術
近年の培養液の開発により実現可能となった胚盤胞移植ですが、胚盤胞への到達率は、十分満足できるものではなく、まだ改良の余地があります。
また培養器の環境が体内に比して悪ければ、長期に培養するほど胚にとってはストレスにもなります。その結果、妊娠の可能性を持っている受精卵が培養の途中で淘汰されてしまい、妊娠の機会を逃していると考えられるケースが実際に多く存在します。

 3.一卵性多胎
昨今の産婦人科医師、病院の不足とあいまって、ARTの普及に伴い周産期管理に人手のかかる多胎妊娠が増えたことは、医療の現場を圧迫し、社会問題となりつつあります。
ARTによる多胎妊娠は、その大半は受精卵を複数個移植することが原因ですが、近年、受精卵を一個しか移植していないのに多胎妊娠となる症例が増えています。こうした一卵性の多胎妊娠は、周産期管理がさらに難しく、出生児が発育不良に陥ったり、流早産するなどの問題点があります。
一卵性双胎は、受精から卵割、着床の過程で受精卵が二つに分断されることが原因です。胚盤胞培養などの長期培養では透明帯が硬化するため、孵化の際に受精卵が裂けて分断してしまうことが原因と考えられてきました。しかし最近の研究では、培養器の中で胞胚が収縮と拡張を繰り返すことで、胎児になる内細胞塊が断裂するという事実も判明しました。
胚盤胞移植が導入された時には、このような事態は予想されておらず、学会やマスコミでも取り上げられ問題視されました。こうした事態については、今後さらなる検証と対策が必要であると思われます。

当院では、現時点では以下のような方針をとります。
 基本方針
1.
初回の体外受精(顕微授精)では、移植がキャンセルとなる可能性の少ない初期胚移植を行う。移植後に余った受精卵は追加培養し、胚盤胞に到達した場合は、凍結保存を行う。
2.
二回目以降については、胚盤胞移植も積極的に検討する。

 最初から胚盤胞移植を行う可能性のある場合
1.
卵管性の不妊症の場合。
2.
子宮外妊娠の既往や卵管水腫のある場合。
3.
何らかの理由で初期胚移植がキャンセルとなり、凍結保存となった場合。

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